2017年7月1日土曜日

(185) 肺リクルートメント手技は輸液管理指標になるのか

従来輸液の指標として使用されていたCVPやHR、血圧など、いわゆる静的指標よりも、
SVVなどの動的指標の方が輸液反応性や輸液管理の指標として正確であると考えられている。
とはいうものの、SVVが麻酔中に必要不可欠なものかというと、そうでもない。

なんでか。

ARDSから始まった肺保護換気戦略が、
手術中の麻酔にも広がってきた近年、
一回換気量の設定を、SVVを評価するため必要なを8ml/kg以上にしたくない。
低換気量ではSVVの信頼性が低下してしまう。

SVVを活用すれば予後が改善する!と言いたいけど言えない。
なくても麻酔科医の経験である程度カバーできるからかもしれない。
しかも、動的指標とセットで扱われることが多いGDTの優位性も最近では怪しい。

SVVを測定するためには某社の機器が必要
→予後を改善できるかわからないのに、しっかり金はかかる。

でもやっぱり術中の判断に、なんらかの動的指標があると嬉しい。
そこで出てきたのが肺リクルートメント手技(LRM)を活用するというアイデアがある。

Changes in Stroke Volume Induced by Lung Recruitment Maneuver Predict Fluid Responsiveness in Mechanically Ventilated Patients in the Operating Room.
Anesthesiology. 2017 Feb;126(2):260-267.

人工呼吸器で圧サイクルを作る代わりに、
用手的に用圧を作り出そう!ということで、
原理は基本的に同じである。

バッグを押して、
呼吸回路内圧を高めると、
胸腔内圧が高まり、
右心前負荷 減少、
右心後負荷 増加し、
結局、右心拍出量が減少する。
回り回って左心拍出量も減少する。

その減少具合が大きいと輸液反応性あり!と判断できる、というわけである。

volume control:TV 6-8ml/kg
肺リクルートメント手技:30cmH2Oを30秒間

-30%以上SVが低下していると、
感度88%、特異度92%で輸液反応性があることを予測できる。
gray zoneは-22%〜-37%。
AUCは0.96(0.81-0.99)ということでなかなか良い。

でも、やっぱりSVを知るためには某社のキットが必要になる。

SVの代わりに何かで代用できないか?

BP ≃ CO x SVR より

BP(SAP)で代用できてくれると嬉しいのだが、
ΔSAP-LRMのAUCは0.52(0.26-0.77)で輸液反応性の指標としては役に立たない。

BP ≃ CO x SVRの式も、実際はCVP、あるいはRAPを加味しないといけない、
あるいは左室後負荷が上がる影響もあるのか。

肺リクルートメント手技で動的指標が得られ、
輸液反応性を推定できるようになるのはいいのだが、
結局、某社のキットが必要になるのは変わらないのか。残念。



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