2017年7月9日日曜日

(186) 術中低体温が術後予後に与える影響

たいして人の名前は覚えていないが、
Sesslerという名前には、「あ、体温の権威ね。」という漠然としたイメージがあるる。

体温といえば、昔は全身麻酔によりしばしば低体温になっていた記憶がある。
しかし、このSesslerらのグループが、術中低体温が術後転帰の悪化(手術部位感染症増加、出血量増加、入院期間延長)させると報告して以降、皆一生懸命、例えば温風式加温装置を使用して加温に努めるようになった。
おかげで、最近では術中低体温は見ることはほとんどなくなった。

ところが!

不勉強は恐ろしいもので、

この体温と予後の関係について否定的な意見が多く、
今では、35度代程度の低体温では臨床的に有意な転帰の悪化は認めない、

というのが最近の常識になっているらしい。

つまり、過去に常識とされていたエビデンスが覆されたわけである。



他にも、
体温ほどのインパクトは個人的にはなかったのだが、
高濃度酸素投与を行うと、手術部位感染症が減るというエビデンスもあった。
しかし、このエビデンスも今では否定されている。

エビデンスレベルが高いとされるメタ解析により有効性が示されていても・・・。

今の常識は、明日の非常識。

この気持ちを忘れずに、
これって本当にそうなの?と自問自答しながら、
日々の日常診療に取り組んでいかなければいけない。


否定されてしまったエビデンスは両方ともSesslerのグループのものらしい。
彼らの報告はほとんど今では否定されているとのこと。
一体なんだったんだろう!?

今回のLiSA7月号の特集
エビデンス、兵どもが夢の跡−1
「周術期高濃度酸素投与」の迷走とWHOガイドラインの過ち、
は読み応えがありました。
シリーズものっぽいのでこれからが楽しみです。

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