2017年6月10日土曜日

(181) 手術部位感染症(SSI;Surgical Site Infection)を予防する

整形外科手術において、
手術部位感染症(SSI;Surgical Site Infection)は、
人工関節置換術や、骨折手術よりも、
脊椎手術に多い。

予防を目的に24時間(〜48時間)の抗菌薬投与が推奨される。
耐性菌発生のリスクとなるため、
48時間を超えての使用は推奨されない。

抗菌薬は 第1世代セフェム系抗菌薬が推奨される。

MRSAが高率に発生している施設や、
MRSAの保菌者では、
第1世代セフェム系抗菌薬とバンコマイシンの併用も推奨される。
ただし、他の抗菌薬のように、バンコマイシンの急速投与はダメ。
1gを1時間以上かけて投与する。

整形外科手術ではセメントがよく使用されるが、
セメントに抗生剤を混ぜた方がいいかはcontraversialな問題である。

術野でのバンコマイシンパウダーの有用性は、
観察研究では良い結果が示されているようだが、
RCTでは差がなく、
過敏性の問題や、細菌の耐性化の問題などより、
CDCのガイドラインではDon’tの扱いとなっている。

鼻腔保因菌とSSIの原因菌は85%で一致していることから、
術前の鼻腔&全身除菌も重要と考えられている。

手術室の床&そこら中の機器は、汚染されているものとして認識すべし。
当然、手指も汚染されているものと認識するべきであり、
そのため、手指消毒は頻繁にやるのが良い。

通常、術前に術野を消毒するが、どんなに消毒しても滅菌できるわけではない。
イソジンドレープを使用すると、
経時的な細菌細菌増加率は減る。
その結果、SSIのriskも減る。

ちなみに消毒についてだが、
即効性のアルコールであっても30秒は待つ必要があることが知られている。

手術室内への頻繁な人の出入りは良くない。
最小限にとどめるようにした方が良い。

clean roomを使用すればOKというわけではない。
clean roomを使用した方がむしろSSIが増えるという観察研究もある。
やはり不要なstaffの出入りは避ける必要がある。

術中イソジン洗浄は有効かもしれない。
これから増えてくるかも。

体温管理の重要性はよく指摘されることだが、
SSI、あるいは死亡率への影響に関するエビデンスは少ない。



日本麻酔科学会第64回学術集会 共催セミナー[L01]
最新の整形外科手術部位感染対策~麻酔科医と共有したい内容を中心に~
の聴講メモより

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