2017年12月3日日曜日

(191) 開頭血腫除去術の麻酔における血圧管理

開頭血腫除去術の麻酔におけるpointは、

 1. 脳出血増大の回避(一次性脳障害)
 2. 脳灌流圧の維持→脳虚血の回避(二次性脳障害)

である。

そのために大切なのは血圧管理である。

1. 脳出血増大の回避(一次性脳障害)
のためには、
INTERACT trial(PMID:18396107)
ATACH trial(PMID:20457956)
を参考に、
日本脳卒中学会脳卒中治療ガイドライン2015、
並びに、AHA/ASAガイドライン2010(PMID:20651276)では、

収縮期血圧:140mmHg未満

を目標としている。

これによりさらなる出血の増加を防ぎ、
血腫による直接的な損傷、つまり一次性脳障害の拡大を予防する。

ただ、血圧を下げたら下げたで、
次は脳灌流圧の低下から二次性脳障害、
すなわち残存健常組織の新たな虚血、
あるいはペナンブラの永続的な障害が問題になってくる。
(ペナンブラ:虚血により機能は障害されているが、治療により回復可能な周辺領域)

一般的に、
脳灌流圧は、
脳灌流圧(CPP)=平均血圧(MAP)ー頭蓋内圧(ICP)
で計算される。

CPPが50mmHg以下では脳虚血が顕在化し、
逆に、70mmHg以上に管理してしまうと、
医原性のARDSの発症が5倍に増加するという報告があり、
CPPの目標値:50〜70mmHg
とされている。
(PMID:25208678、1752547)

では、適切なCPPを保つためには、
どのくらいのMAPを維持しなければいけないのだろうか。

ICPが20〜25mmHg以上はICP上昇と考えられ、
ICPは20mmHg未満に下げる必要があるとされている。
(PMID:25208678)

脳出血症例では脳圧が上昇していることが予想されるので、
少なく見積もって、
ICP:20mmHgとし、
CPP:50mmHgを期待するとなると、

MAP=CPP+ICP なので、
MAP=50+20=70 となり、

MAPは少なくとも70mmHg以上、必要な計算となる。


麻酔導入すると血圧は大きく下がるだろうから、
MAPを70mmHgを保つとなると、
最初から積極的な昇圧をしていかなければいけない。

目標は,
平均血圧:70mmHg 以上、
収縮期血圧:140mmHg 以下、である。

ちょっとした配慮で脳出血症例患者の神経学的予後が変わると思えば、
日々の日常診療を丁寧に実施していく必要がある。

INTENSIVIST Vol.9 No.4 2017 脳卒中 も確認してください。





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